法人税

キャッシュフローの重要性:黒字倒産について

皆さんは黒字倒産という言葉をお聞きされたことはございますでしょうか。黒字なのに倒産するというのは初めて聞いたときは理解に苦しむものでしたが、少し考えれば十分にあることだと思いますので、今日は黒字倒産の怖さについて語りたいと思います。
 
■黒字倒産とは
文字通り、PL(損益計算書)上は黒字なのに、倒産に追い込まれることです。このPL上が黒字という点により、発見が遅れてしまったり、場合によっては税理士も気づかないケースがあります。
 
■なぜ黒字倒産が起きるのか
では、黒字倒産がなぜ起きるのかというと、以下の要因が考えられます。
・企業の財政状態を表す指標として、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)を参考にする経営者が多い(どちらかだけしか見ていない経営者も多いと思います)
・これらの財務諸表では、分かりづらい動き(キャッシュフローの悪化)により黒字倒産が起きる
 
■PL(損益計算書)
PLは一定期間の企業の損益をまとめた財務諸表です。1年間の売上や原価・費用をまとめて、実際に1年間でどれだけ儲けたか(どれだけ黒字か)を記載します。
ここで注意しないといけないのは、損益に反映されないキャッシュアウト(例えば借入金の返済など)はPLには計上されず、またキャッシュが動かない損益(減価償却など)がPLに計上され、PLはキャッシュ(現金)の動きと必ずしも一致しないということです。
 
■BS(貸借対照表)
BSはある地点での企業の財政状態を表す財務諸表です。年度末時点で、現金や有価証券・資産がどの程度あるかを記載しています。BSは各地点の総資産・総負債・純資産を記載し、それらの変動については記載しません。
 
■黒字倒産の例
キャッシュイン(入金)<キャッシュアウト(出金)の状況が続くと企業の財政状態が悪化し、最悪の場合、黒字倒産します。
 
【PLだけ見る場合】
例:月間PL
売上1,000万円
原価・人件費 ▲850万円
銀行支払利息(営業外費用) ▲100万円
税引前利益 50万円
 
上記の例の場合、PLだけ見ると、月間の税引前利益が50万円で黒字であり、単純に12倍して1年分を計算すると、年商1.2億円、税引前利益600万円の安定した企業に見えます。
 
【BSだけ見る場合】
例:前年度末BS
総資産  7億円(店舗土地6億円、現金同等物は1億円、店舗建物は減価償却済)
総負債  6億円(銀行借入金、利率2%、元利均等12年返済)
純資産 1億円
 
上記のBSだけを見ると銀行借金はあるものの、純資産が1億円あり、健全なように見えます。
 
【PL/BSを併せて見る場合】
では、上記のBS/PLが同じ企業のものだとしたらどうなるでしょうか?
結論的には数年以内に黒字倒産します。
 
まず銀行利息は年間2%のため、6億円の残高があれば年間1200万円(月100万円程度)になるため、月間PLで支払利息が100万円になっているのと整合します。その後元金が減っていくため利息も減り、PLは改善されていくことが予想されます(黒字が大きくなる)。
 
次にBSですが、銀行借入金は6億円を12年で返済なので、元金だけで考えれば年間5千万円(月間500万円)返済する必要があります。前期末時点で現金同等物が1億円あるので、利息と合わせて600万円弱払うことは可能で、PLも黒字なので債務超過になることはなさそうです。
 
では、上記のBS/PLに沿ってキャッシュの動きを見てみます。
 
月初現金 1億円
売上 1,000万円
原価・人件費 ▲850万円
銀行支払利息(営業外費用) ▲100万円
銀行借入金返済(元金) ▲500万円
月末現金 9,550万円(▲450万円)
 
いかがでしょうか?これが数年続けば現金は底をつき、店舗土地を売却しないと借入金返済ができず、事業継続ができなくなります。
普通に考えれば月商1,000万円の会社が毎月500万円以上の返済をすれば倒産するのは目に見えていますが、PL上は黒字であり、BS上も債務超過していないため、一見は健全な企業に見える可能性があります。
 
上記のような極端な例は無いとは思いますが、PLだけを見てキャッシュの動きを終えていない企業は一定数あるかと予想されます。
 
顧問税理士や会計事務所と打合せされる際は、PL/BSだけでなく、現金の動き(キャッシュフロー計算書)についても注視してみてはいかがでしょうか。

2022/6/27
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