法人税

グループ通算税制概要

令和4年4月1日以後に開始する事業年度から、グループ通算制度(旧連結納税制度)が施行されます。
本日はグループ通算制度の概要について解説したいと思います。
 
■制度の適用について
・対象となる法人:100%支配関係グループ内の各内国法人(外国法人除く)
・適用方法;新たに適用を受ける事業年度開始日から3月以上前に対象となるグループ会社全社の署名にて、申請書を税務署に提出(申請書等の手続きについては次回に詳細を記載します)
 
■制度の基本的な仕組み
・損益通算:グループ各社の所得・欠損を通算(赤字と黒字を相殺)する。通算後の所得を各社に配分し、各社にて税率を乗じて税額を算出。
・個別申告:損益通算はグループ全社の合計所得で行われるが、確定申告は通算後の所得を用いて各社で行う(旧法の連結納税では国税の申告は親法人のみで子会社の申告はありませんでしたが、通算制度ではグループ各社が納税主体となり各社において国税の申告が必要)
・親法人と子会社で事業年度が異なる場合には、親法人の事業年度に合わせて、子会社側でも法人税申告が必要となる。
・1社が修正申告する際は、対象となる1社のみの修正で他の通算法人(100%グループ内の他の会社)は、修正申告不要(旧法の連結納税の場合は、1社誤りがあると全社にて修正が必要でした)
 
■グループ通算制度を導入した方が良い例
①グループ内に恒常的な赤字法人がある
単体納税(グループ通算を行わない場合)の場合、A社が赤字(欠損)になった場合は、将来の事業年度においてA社が黒字(所得)になったときに過年度の赤字と相殺することが出来ます。ただし、欠損の繰り越しには期限(現行法では10年)があるので、10年以内に欠損を相殺しきれなければ、執行してしまいます。
この点、グループ通算制度であれば、A社が1000万円の赤字、B社が3,000万円の黒字の場合、損益通算により、A社の赤字をB社の黒字と相殺できることとなります。この場合、A社、B社の2社の合計の所得が2,000万円となり、単体納税の際より有利となります。
 
②税額控除について控除限度額の上限にかかっている場合
グループ通算制度の場合、研究開発税制の税額控除や外国税額控除の控除限度額は通算グループ全体で計算することとなります。
この点、単体納税の時の控除限度額より、通算制度導入後の控除限度額の方が大きくなるケースが多く、その分節税になることとなります。
控除限度額が拡充されうるか否かは各グループの状況に応じて、変わりますので、ご興味がある際は一度顧問税理士にご相談されるのが良いかと考えます。
 
■グループ通算制度のデメリット
①原則として継続適用
グループ通算制度の導入を行うと、規定上は「やむを得ない事情」がない限り、適用を辞めることはできません。従い、導入にあたっては税理士を相談の上、慎重に導入されることが良いかと考えます。
 
②事務負担
通算制度を導入する場合、グループ各社の損益通算が必要となります。数社規模のグループであれば、エクセル等を用いた計算も可能ですが、大規模グループになると、専用の税務ソフトを導入して通算所得の計算を行う必要があり、事務負担としては従来の慣れた方法よりも増えることとなることが考えられます。
 
③投資簿価修正・時価評価
単体納税の時には適用されない規定として、投資簿価修正や時価評価資産の時価評価課税があります。これは主に新しく通算グループに会社が増えるときや、逆に売却等により通算グループから子会社が離脱するときに適用される規定です。場合によっては単体納税の時よりも税金が多く発生してしまう可能性もあるので、特に100%グループ内の会社の加入・離脱が多いグループについては、慎重に導入を判断する必要があります。
 
■まとめ
通算制度について
・メリット:損益通算、税額控除の上限拡充による節税
・デメリット:事務負担、通算制度特有の規定(投資簿価修正・時価評価課税)
 
いかがでしたでしょうか。かなり簡潔に記載しましたが、制度自体は複雑であるため、導入を少しでも検討される企業様は税理士にご相談されることを強くおすすめします。

2022/6/13
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