国際税務

タックスヘイブン対策税制

企業のグローバル化に伴い、国境を越えての税金の問題、いわゆる国際税務は複雑化する一方です。本日は国際税務のうち、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)について解説します。
 
タックスヘイブン対策税制の対象となるのは、税率20%未満(場合によっては30%未満)の国に所在する外国関係会社を保有する日本企業です。
 
例えば日本の法定実効税率は30%前後ですが、国によっては法人税率が20%未満の国(香港、シンガポール、イギリスなど)もたくさんあり、ドバイのあるUAEのように一定の法人には法人税が全く課されない国もあります。
1億円稼げる日本企業は法人税等を3,000万円ほど納付するのが一般的ですが、UAEに子会社を作り、この1億円をUAE子会社の所得とすることで、法人税が課されず、租税回避できてしまうことが考えられます。
この租税回避を防ぐ目的で制定されたのがタックスヘイブン対策税制となります。
タックスヘイブン対策税制が適用された場合、UAE子会社の所得にしていた1億円が日本親会社の所得に加算され、日本でも課税を受けることとなります(税制の詳細や計算はかなり複雑ですが、簡易に解説しております)。
UAEのケースでは現地での課税がないですが、例えばイギリスであれば2021年現在で現地の法人税率が19%なので、同じ1億円の所得にイギリスで19%、日本で30%とで合計49%の課税を受ける可能性があります(その後に日本親会社で外国税額控除を適用すれば実質30%まで低減することは可能ですが)。
 
また、タックスヘイブン対策税制で使用する現地の税率は法定税率とは異なり「租税負担割合」というものを計算するため、現地国の法定税率が20%以上であっても、租税負担割合が20%未満となるケースがある点にも留意が必要です。
さらに、現地法人の活動実態が著しく認められない場合(いわゆるペーパーカンパニーやキャッシュボックスの場合)には、税率が20%以上であっても30%未満であればタックスヘイブン対策税制の適用を受けることとなります。
 
上記をまとめると、税率20%未満の場合(一部は30%未満の場合)にはすべての外国子会社で制度の対象となりますが、「タックスヘイブン対策税制の対象になる=必ず課税を受ける」というわけではありません。あくまで租税回避を防ぐ税制なので、ビジネスを進めていく上で、必要に応じて設立される海外子会社は課税を受けないように設計がなされています。具体的には以下の通りです。
 
・経済活動基準を満たす外国関係会社(部分対象外国関係会社)
→一定の所得(受動的所得)のみを日本親会社に合算課税(税率20%未満のみ)
・経済活動基準を満たさない外国関係会社(対象外国関係会社)
→全所得を日本親会社に合算課税(税率20%未満のみ)
・ペーパーカンパニー、キャッシュボックス(特定外国関係会社)
→全所得を日本親会社に合算課税(税率30%未満のみ)
 
上記の経済活動基準とは、簡単に言うと、海外子会社にしっかりとした事業実態があるかどうか(オフィスを有し、役員が現地で職務執行しているか等)を判定する基準を言います。この経済活動基準を満たすことで、海外子会社全体の所得の課税は受けず、受動的所得のみの合算課税になります。
受動的所得には、受取利子や配当といった営業外収益に該当するものが規定されておりますが、少額免除(年間2,000万円までは免除等)があるので、課税されないケースが多いです。
※課税を受けない場合でも、タックスヘイブン対策税制の対象となる子会社については、日本親会社の確定申告の際に別表添付が必要です。
 
従って、税率の低い国に子会社を有する場合は、経済活動基準を満たすように現地子会社の実務を整備しておく必要があります。
 
また、留意点として、経済活動基準を満たすかどうかは納税者に証明責任があるため、税務調査時に経済活動基準を満たすことを証明できなければ、経済活動基準を満たさないと判定され、追徴課税される可能性があります。
 
経済活動基準の判定については、規定が複雑であり、証憑資料を整備しておくことが望ましい点からも、海外子会社を有する企業様で整備をなされていない場合は、税理士にご相談されることをおすすめします。もちろん、弊社でもご相談可能ですので、お気軽にお問合せフォームよりお問い合わせください。

2022/6/6
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