会社設立

法人化した際の税務上の留意点(役員報酬)

前回は法人設立の際に必要になる届出書等の解説を行いましたが、今回は晴れて法人化した後の役員報酬の留意点について解説します。法人税法を理解していないと役員報酬がすべて課税されてしまう恐ろしい規定となっております。
 
法人の所得を計算する場合、売上から原価及び人件費等の経費を差し引いて課税所得を計算することとなりますが、役員報酬の払い方を誤ってしまうと、これが経費として差し引かれず、課税所得に含まれてしまいます。
 
では、実際に経費(損金)として認められる役員報酬の要件は、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動賞与のいずれかに該当するもので、職務内容に沿って不相当に高額でないものに限られるものとされております。
 
定期同額給与とはその事業年度の各支給日における支給額が同額であり、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与です。
例えば、毎月25日に30万円ずつ支給しているのであれば定期同額給与になりますが、毎月の支払額が25万円になったり、35万円になったりして定額にならなければ、定期同額給与に該当しないこととなります。この場合、その事業年度に支払われた全額が定期同額給与として認められないため、例えば年間の役員報酬が400万円の場合、その全額に法人税が課されるため、実効税率30%で考えると120万円もの無駄な税金を払うことになる可能性があります。従って役員に対する給与は毎月同日に定額としておくことが鉄則となります。
 
次に事前確定届出給与ですが、これは主にボーナスに対する規定かとご理解ください。役員に支給されるボーナスは基本的に損金不算入となってしまいますが、事前確定届出給与に関する届出を提出しておくことで、ボーナスを損金算入することが可能となります。
届出書は以下よりダウンロードできますが、提出期限は通常の、株主総会決議から1月以内とされております。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm
例えば3月決算法人が6月5日に株主総会にて、役員への同年12月のボーナスを100万円と決めたのなら、100万円を12月に支給する旨の事前確定届出給与に関する届出を株主総会から1月以内の7月4日までに提出する必要があります。
 
次に一定の業績連動賞与ですが、これはフリーランスが法人化した場合などに該当するであろう同族会社の場合には適用できない要件となっているため、解説を省略いたします。
 
従って、上記をまとめると法人化した際の役員報酬は①月額給与は毎月同額(定期同額給与)にし、②賞与を支給する場合には、株主総会決議から1月以内に事前確定届出給与に関する届出を提出する必要があう2点に留意しておくことが必要です。
 
最後に役員報酬の損金算入の規定で「不相当に高額ではないもの」についてですが、ここは、税法上では明確に定義されておりません。
しかしながら、過去の裁判判決事例を参考にすると、業務執行内容に比して著しく高額な報酬ではないか、他の類似法人の役員と比較して著しく高額な報酬ではないかという点が論点になっているケースがあります。
この点、例えば社長の奥様を法人の役員にして、一定の給与を払い続けたりする場合、奥様が名義だけの役員で実際に業務執行してなかったりすると、職務内容に比して不相当に高額と言えるため、奥様に対する役員報酬は損金不算入とされることが考えられます。
ただし、フリーランスが1人だけで営む法人であれば、不相当に高額な報酬の論点はさほど気にしなくていいと考えます。
 
いかがでしたでしょうか。今回は法人化した際の役員報酬の留意点について、解説しましたが、法人税法はフリーランスが個人事業主として申告を行っていた時よりも税制が複雑になります。
法人化のタイミングで顧問税理士を契約する会社様が多いことも事実ですので、法人を運営していくのであれば確定申告書の作成等を税理士に委託されることをご検討いただければと思います。

2022/2/28
PVアクセスランキング にほんブログ村